現代社会は多様性が重視される社会です。仕事に対しても、積極的に自らのキャリアアップを図る人、仕事とプライベートの双方を充実させようとする人、あるいは家族、友人、地域での交流などプライベートをより重視する人など、それぞれの価値観が異なる人で構成されるようになってきています。しかしながら、濃淡はあれ仕事そのものにやりがいを感じることは、集中力が高まり、また仲間や顧客に貢献ができ、人生に充実感を得られる方法のひとつです。とくに医療は、それに関わるすべての職種にとって、仕事の価値、個人の成長、他者からの評価を通して、充実感が得られ「仕事のやりがい」を感じることができる仕事であると思います。
私たち、あわら病院は重症心身障がい児(者)医療、神経・血液・免疫などの難病医療、慢性心不全・カヘキシアなどの長寿医療を専門とした医療を提供しています。これらの医療分野は継続して濃厚な医療的ケアを必要とし、医療の効率化が進んだ現況においては、他の設置主体では必ずしも実施される保証がありません。患者およびその家族の方が安心して医療を受け地域で生活できるように、私たちは福井県内でセーフティネットとして貴重な機能を担い続けています。
さらに、2016年からは私たちが持つ障がい児(者)支援機能、在宅療養患者支援機能を活用して、医療的アプローチと社会的アプローチを統合したケアサービス「Hospital in the Home, Home in the Hospital」を提供しています(NHO New Wave)。過疎地域は超高齢者社会が先行する日本の医療のフロンティアです。社会的弱者とされる障がい児(者)や慢性疾患患者の方が、住み慣れた地域で可能な限り最期まで安心して生活できるように、直面する高齢化・過疎化に関わる医療問題、その一つ一つを個々の問題と考えず、社会で共有すべき問題として捉え、地道な研究と柔軟な改革で貢献できるように活動しています。
国立病院機構は、全国141病院・約5万床の病床を約7万人の職員によって運営している日本最大の病院グループです。この大きなスケールを生かして、組織全体で医師、看護師、メディカルスタッフ、介護・福祉職、事務系総合職等、それぞれの分野で専門性の高い知識・技術を習得できるように育成キャリア形成支援を行っています。
一方、当院は国立病院機構が運営する病院の中で最小規模に属する病院の一つです。小さなスケールであるからこそ、幹部から非常勤まで顔が見える関係を構成することができ、教育専従職員が十分に目配りできるメリットがあります。新人の総合事務職は職場のローテーションにより、種々の仕事に対する経験値を高めることを方針としてます。また、全職種とも、即戦力として俯瞰的に捉える仕事に就くことが少なくなく、早期から能力的や精神的な成長が期待でき、自身の力として目標の達成が可能で、そのうえでの挑戦的な試みは最も歓迎されるところです。
国立病院機構の業績評価制度では、職員1人ひとりが病院目標・部門目標を共有し、業務上のコミュニケーションを通じて職員の能力向上や業務の改善を図り、人材育成を通じて各病院と組織全体の発展を目指すものです。職員の業務で発揮した能力・ 適正・実績等を適正に評価して、その結果を給与等に反映するとともに、職員の業務遂行意欲の向上を図っています。具体的には、一般職員では、① マナー・接遇 ② 日常業務に対する取組状況(知識・識見、向上心・探求心) ③ 行動力・判断力 ④ チームワーク・協調性 ⑤ 自己管理 ⑥ コスト意識 ⑦ 安全管理行動(リスクマネジメント)を評価するとともに、課題に取り組む経過と業績を評価します。
職員の評価は外部からの評価も重要と考えています。そのためにはあわら病院では日々の業務や研修内容を発信し、広く知れ渡るように試みております。その結果として寄せられる評価(もちろん、苦情も含めて)を共有するようにしています。
充実したプライベートを持つことは人生を豊かにしてくれますし、多様な価値観をもつ職員集団を作ることは、人間らしい生活の支援をするセーフティネット医療に携わる病院として重要なことです。
国立病院機構では、職員の皆さんが仕事と育児・介護の両立に悩むことによってキャリア形成が中断されることなく、安心して働き続けられるように、仕事と育児・介護の両立に職場を挙げて支援しています。具体的には「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)及び「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき、職員の仕事と子育ての両立に取り組むために一般事業主行動計画(仕事と育児・介護の両立支援プログラム)を策定し、「ワーク・ライフバランス応援ガイドブック」を作成することにより職員の理解を深め、利用を促進しています。
超過勤務を少なくすることは、ワーク・ライフバランスを保つために大変重要なことです。あわら病院では安定した経営を継続させ、看護師や医師の充足を図るとともに、リハビリテーション職、ソーシャルワーカー、保育士、心理療法士、あるいは医師事務作業補助者などの雇用を拡大し、多職種による体制により仕事の分担化と効率化により超過勤務の縮減を図っております。とくに看護師では勤務時間、勤務内容の見直しにより日勤の超過勤務時間を劇的に短縮し、医師では当直医業務、勤務日の見直しにより夜間の超過勤務をほぼ解消しております。